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膿庖性乾癬 概要

膿庖性乾癬(のうほうせいかんせん)とは乾癬の病型の1つで、発熱や皮膚の発赤などの症状に加え大量の膿疱が現れる皮膚疾患です。複数種類に分かれ る乾癬の病型の中でも、全体の約90%以上と最も症例数が多い尋常性乾癬の場合、患部が乾燥しているのが特徴的です。一方膿庖性乾癬最大の特徴である膿疱は、皮膚に膿が蓄積したものでジュクジュクしています。 血液中の白血球の集合体である膿疱は、手足など身体の一部に出現する場合もありますが、患者さんによっては全身が患部となります。膿疱が全身に及ぶ場合、 特に汎発性膿庖性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)と呼ばれ一般的な乾癬や膿庖性乾癬とは区別されます。 通常の乾癬よりも深刻な症状に見舞われる為、現在汎発性膿庖性乾癬は国の特定疾患に認定されています。いわゆる難病で、現時点では汎発性膿庖性乾癬以外に129の病気が特定疾患として指定されています。

症状

膿庖性乾癬を発症すると、皮膚に無菌性の膿疱が出現します。どの部分が患部となるのかは患者さん1人1人違いますが、症状が重 く下半身全体に膿疱が広がると体重が下肢にかかる為歩行も難しくなる程の痛みが生じる可能性があります。 痛みと同時に強烈な痒みも伴いますが、普段通り歩けなくなると車椅子も必要になってきます。痛む場合ロキソニンが処方されますが、完璧に痛みを取り除ける とは限りません。 初期症状では赤い発疹が出るのでニキビだと思われることも。ただし発疹はハイスピードで巨大化し、2~3日もすれば赤い発疹の周りに膿が滲み出るようにな ります。中央には次第に茶褐色に変色していきますが、発疹が出始めるのと平行して発熱、食欲不振など風邪のような症状にも見舞われます。

部位

膿疱性乾癬が発症部位については、2つのケースがあります。

  • 手足など一部に皮疹する場合
  • 全身に皮疹する場合

全身に皮疹が現れる膿疱性乾癬は、「汎発性膿疱性乾癬」と呼ばれています。「汎発性膿疱性乾癬」の場合は、症状が重いため、特定疾患に認定されています。

汎発性膿庖性乾癬 概要

汎発性膿庖性乾癬は非常に危険な乾癬で、尋常性乾癬の再重症とされます。乾癬自体は痒みや痛みを伴う病気で死に至ることはありませんが、汎発性膿庖 性乾癬の場合極度の衰弱から生命を奪われる恐れがあります。 特定疾患に認定されている汎発性膿庖性乾癬患者さんは、現在全国におよそ1000人前後いらっしゃいます。乾癬患者数は約10万人ですから、汎発性膿庖性 乾癬が占める割合は全体の1%程度とごく稀なケースだと言うことが分かります。推定によると年間17人程度の発症しているようですが、汎発性膿庖性乾癬の 場合男性1人に対し女性は1.2人、とやや女性の発症率が高くなっています。年齢幅は小児期と30代が多少目立つぐらいで、幼い子供から高齢者まで幅広い 範囲に及んでいます。 乾癬同様汎発性膿庖性乾癬も原因や発症のメカニズムが正確に解明されていませんが、遺伝的背景も可能性として指摘されています。妊娠や感染症などがきっか けになり、皮膚の細胞やリンパ球が分泌するサイトカインなどの物質が高熱を引き起こしたり、血の中の白血球が皮膚上に呼び寄せられ、膿疱がつくられるとも 言われています。炎症反応が起きやすい遺伝的要因を引き継いでいると、乾癬発症率も上昇する恐れがあります。 どんな症状が現れるのかは多種多様で特定できませんが、症状自体急に発症します。 いずれにしても汎発性膿庖性乾癬は認定基準を満たせば公費負担の対象疾患ですから、担当ドクターとも相談の上公費を頼れるようなら所定手続きを踏み治療費に役立てましょう。現在の申請患者数は約1500人です。 ちなみに汎発性膿庖性乾癬と類似点が多い掌蹠膿疱症の場合、無菌性膿疱症と言うことでも共通していますが、厚生労働省から特定疾患認定を受けていませんか ら公費は期待できません。

汎発性膿庖性乾癬の症状

汎発性膿庖性乾癬の症状は初期段階で全身に紅斑(こうはん)と呼ばれる皮膚の赤みが見られますが、灼熱感も同時に伴います。まるで風邪のように寒気 を覚え、高熱が出る患者さんが大半です。全身のむくみや関節痛を併発するケースも珍しくありません。 その後全身に広がった紅斑の上に、膿疱が大量に形成されます。結膜炎や虹彩炎、ブドウ膜炎など眼の炎症に見舞われる患者さんもいらっしゃいます。眼のかす みを放置しておくと眼が見えなくなる恐れもあり大変危険な状態です。 広範囲に及び皮膚に膿疱が多発することで、皮膚が元々備えるバリア機能もダウンしますから、体内の水分バランスも乱れやすくなりますし、熱の影響もあり体 力も激しく消耗されます。おしっこが出にくくなる、などの症状の他全身倦怠感や食欲不振、関節の炎症や変形など、日常生活を送るのに支障が出る程の症状に 次々と襲われます。 長期間こういった辛い症状が続くと心臓や腎臓への負担も大きくなりますし、幼児や高齢の患者さんは生命を左右される程のダメージを負いますから、油断でき ない状態です。 ただ、医療機関で適切な治療を受ければ症状は次第に緩和されます。皮膚の赤みも徐々に薄れていきますし、多発した膿疱も一旦破れます。破れた膿疱の皮が剥 けてくれば治癒も近づきます。ただしそのまま正常な皮膚に戻るケースと一般的な乾癬の発疹に移行するケース、手足など部分的に膿疱が繰り返し出るケースな ど、その後の症状は個人差があります。 皮膚の深刻な症状は医療機関で治療開始後、約43%の割合で改善に向かいます。ただし症状のピークを過ぎた後も37%の患者さんが再発し、一旦症状が軽く なった後に皮膚紅斑や膿疱が出現したり、尋常性乾癬に移行してしまっています。完治が難しい病気です。

汎発性膿庖性乾癬の診断

汎発性膿庖性乾癬は公費対象の難病ですから、汎発性膿庖性乾癬と医療機関に診断されるかどうかは非常に重要な問題です。汎発性膿庖性乾癬は一般的な 乾癬よりも症状が重く、長引く傾向があります。辛い症状に患者さん本人がしんどい思いをするのはもちろん、入院治療が高確率で必要になることもあり、度重 なる治療費に家計が圧迫されることも予想されますから。 汎発性膿庖性乾癬かどうかは汎発性膿庖性乾癬の特徴的な皮膚症状が全身に及んでいるかどうか、症状が単発ではなく繰り返し引き起こされているかどうか、そ れに皮膚の病理検査の結果も踏まえて総合的に診断が下されます。 適切な治療方針を定める為にも、その他末梢血数、CRP反応、免疫グロブリン、血沈、ASLO値、リウマチ因子、血清カルシウムなどの血液検査や、扁桃腺 など慢性の病巣感染検査、肝臓や腎臓の検査、眼科検査なども行われます。

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